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【第3回】Cookieレス時代の代替えは本当にIDとSNS?「個を追わない」にはコンテンツ戦略がカギ

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マーケティングの今とこれからを探っていく連載コラム「ボーン・トゥ・プラン ~明日なき計画~」。第3回目となる今回は、先日南の島で開催されたとある「マーケティングカンファレンス」について語ります。
トップマーケターが集う「マーケティングカンファレンス」から見る最新動向について。
「アナイグマ」なりの考察と予見をお話していきます。
第2回はこちら

アナイグマって??

イントロダクション

国内外のトップマーケターが集結する合宿型のカンファレンス。
マーケターなら皆さんご存知のあのイベントに、業界の最新情報を求めてアナイグマが乗り込みました。
情報収集と名刺交換でヘトヘトになりながらも、「今後」のマーケティングの方向性が少し見えてきたようです。

話題はやはり「ポストcookie」

話題の『3rd party cookie廃止問題』。3rd party cookieに代わる「何か」とは。
やはり今回の「マーケティングカンファレンス」も、その話題がトレンドでした。
ある会社は「1st party cookie」の活用を改めて提唱し、またある会社は「SNS」の有効活用を提案。
各マーケターそれぞれの知見を踏まえて、各々が見据える「ポストcookie時代」のデジタルマーケティングの方向性を垣間見る、とても興味深い登壇の数々。

やっぱりねぇ… 正直マーケターから見ると「3rd party cookie」って優秀でスゴイ子だったんです。 「1st party=個人情報」を持たなくても、ターゲットを作れたんだもの。

と、ついつい心の声が出てしまうアナイグマですが…

その登壇の中から「ハッとして! Good」とキタ!企業の登壇をここで少しご紹介します。

帰ってきたメガプラットホーム

さて、今回参加してみてまず感じたのは、ここ数年のこうしたカンファレンスやイベントで余り目立った動きを見せなかった、国内有数のメガプラットホームの「Rさん」や「Yさん」の姿があったことでした。

彼らがこの場に帰ってくるのは久しぶりでは?と当時を懐古してしまいながら、、、
久しく姿を見せなかった(であろう)彼らの語りを傾聴しました。

Yさんが語った事

Yさんは言わずと知れたメガプラットホーム。
会員のID情報、なおかつそのIDの検索行動履歴などのデータを所有しています。
そのデータを可視化するツールを開発したようで(ユーザーインサイト分析ツール)そのサービスを紹介していました。

  • cookieレスの潮流の中、消費者への理解を深める必要性
  • Yさんの持つマルチビッグデータを用いた消費者理解の手法と事例
  • データ活用≒ターゲティング広告ではないビッグデータによる分析

を踏まえてセッションが行われました。

Rさんが語った事

同じく日本有数のメガプラットフォーム。
Yさん同様、IDベースで購買データを保有しています。
Rさんはサービスが広い為、自社経済圏の中でどのような行動をとり、どんな所に接点を持っているのかを分析するサービスを紹介していました。

  • 広告への接触データと、購買データの隔たり
  • IDに紐づいた購買データがマーケティングにおいてどんな意味を持つのか
  • 広告は「投資」として、またユーザーにとって「意味のある」存在であるために

を通してセッションが行われました。

1st party cookieを活用しようという話だった

どちらも自社保有の1st party cookieから取得できるデータ販売に乗り出している事が伺える登壇でした。

脱3rd party cookieとして1st party cookieの活用が見直されている昨今では、妥当性のあるセッションだったように思います。

ただ、アナイグマが面白いなと思ったのは、どちらもドメスティックブランドであることです。
グローバルであり先進的なGoogle社やFacebook社などに目を向けがちですが、データという点で考えると国外のデータより国内データの方が多くの企業で重要な意味を持ちます。

日本の顧客を知らずして外国の顧客を知ったとしても宝の持ち腐れです。
外国のデータに手を付けられるほど、日本国内のデータを活用しきれていないという現実。
この分野はどの企業もまだまだ導入期であることが伺えますね。

近年データを扱ってきた彼らが行きついた先

このカンファレンスには不参加でしたがデータ分析のソリューションを持つXさんから、私宛に届いたメールが興味深かったので合わせて紹介しておきたいと思います。

Xさん

彼らはCRM系のデータ分析など、多くのソリューションを展開してきた実績があります。
そんなデータの扱いに長けている彼らがメールマーケティングで提案してきたのはなんとデジタル人材の派遣。

そもそも多くの国内企業がデータ活用に課題感をもち、更に危機感を持った一部の企業が一足早くデータ活用に取り組んでいます。
そんな企業でも、まだまだ成熟期には程遠いと言えるでしょう。

このような企業に向けデータ活用のサービスやツールなど手法が増える一方、日本にはデジタル人材が不足している、という課題が浮き彫りになっています。
どんなに画期的なシステムを開発しようと、それらを適切に扱える人間、そして社内にそんな人材を育成する環境が揃っていなければ、サービスが活用されることはない。
結局は人である、そこに行きついたのだと思います。

データを突き詰めたら人材に行っちゃうところ、 とても面白味がありますよね~
データ(デジタル)と真逆な
人(アナログ)が使いこなせてこそ、という。

SNS・オウンドの領域

話はカンファレンスにもどり…
「1st party cookie」の復活を語ったYさんとRさんの他に、「cookieレス」の代替としてトレンドに上がったのは「SNS・オウンド」の領域でした。

言うまでもなくSNS・オウンドメディアの活用は「3rd party cookie」に依存しない手法。そのため今回のカンファレンスでも提案が多かった印象があります。
この領域は「SNS・オウンドメディア(自社の場所)」にいかにユーザーを流入し、ファン作りをして、その人たちをよく観察し、どんな人なのか理解した上でマーケティングを行っていくか、が重要となります。この「SNS・オウンド」領域には多くの企業が参戦をしていますが、必ずしもマーケティング効果を最大化出来ているとは限りません。

なぜなら、Xさんの例でお話した同様、獲得したユーザーの「データを分析」して「理解しファンを構築」することが出来る人材や、組織として対応出来る企業が少ないのです。

1st party cookieの代替えとして魅力的な領域ではありますが、運用、効果を考えて行くとやはりハードルの高さを感じてしまうことは否めませんでした。

ここまでが某「マーケティングカンファレンス」の印象に残った登壇の(脱線もしましたが)お話でした。
まとめると、ポストcookie時代は「1st party cookieの復活」と「SNS・オウンド領域」が大きな主流となるのではないか。その中でもデータを分析していかに自らの顧客を理解するのか、という研究が加速して進むのではないかと思われます。

そういえばcookie規制の理由って…

ここでみなさん、一度思い出してください。

何故「3rd party cookie」が廃止される要因になったのか。

ずばり「プライバシー観点から問題視されている」からです。

「cookie」や「SNSアカウント」は「個人情報」ではありませんでしょうか?
「1st party cookieの復活」と「SNS・オウンド領域」をマーケティングに活用するという事は、すなわち「個人情報を使って個を追いかける」事から、根本的には変わりないのではないでしょうか。

このカンファレンス以外でもポストcookie時代は「1st party cookie」と「SNS」と語られる事は多くあります。
ですが、規制の本質的な部分に対する解決法にはなっていないのではないかと思います。

Google社が「3rd party cookie」の規制に乗り出した事で業界に激震が走りましたよね。長いスパンをかけて規制を進めているにも関わらず、まだ対処出来ていない企業が多いのが事実です。この先にもプライバシー関連で益々規制が強まる可能性もあります。
この規制の本質を理解していなければ、流行り出した新しいモノに飛びついて、また規制が入り新しいモノをさがして…というようなイタチごっこになりかねないのです。

より建設的なのは3~4年後に来るであろうモノを見極める事です。
アナイグマとしては自社で「1st party cookie」を活用したソリューションを作るのはやめたほうが良いのでは?「1st party cookie」を扱うのはリスクなのでは?とさえ考えています。

流行り物への対応をしている間に、次の画期的な流行り物がすべて塗り替えていく、これまでも散々見てきたことだからです。
デジタル業界の移ろいはとても早いものです。

クリエイティブに対する考え方が180度変わる??

今までは3rd party cookieがあったので「Y・Hさん」の趣向に合わせたクリエイティブで「Y・Hさん」というユーザーを獲得できていました。
しかし個を追うターゲティングが出来なくなり、「Y・Hさん」の趣向が分からなくなった今、インパクトのあるクリエイティブで「Y・Hさん」の気を引きアクションをしてもらわなければなりません。

すなわち、ABテストや多種多様なクリエイティブを配信し、効果が合うクリエイティブは何か、そして一定以上の効果を示したクリエイティブから人物像を予測するというストーリー性を重視した戦略が必要になってくるのです。

そして人物像の理解を深め予測精度を高めるために、
「Aという課題定義についてアクションを起こした?」
「Bという課題定義についてアクションを起こした?」
というような訴求・ストーリーの選別をあらかじめきちんとしておき、
この選別をしていくことでユーザーのセグメントを切り、ユーザー理解に繋げる為の伏線を作るような全体戦略を考える必要があります。

余談ですが、以前真っ白(白紙)のバナーを間違って配信したことがありました。
そのバナーは他の作成したバナーのどれよりもCTRが良かったのです。
ただこの白紙バナーは効果の良いバナーとは言えません。
何故このバナーをクリックしたのか、どんな人がどんな気持ちでクリックしたのかが全く分からず、白紙バナーを見た人が来た、という事しか解明できないからです。

「3rd party cookie」が主流だった時代からビジネスマン、マーケターになった人材は

『ある程度「人=対象」が解って作るクリエイティブ』
を考えるのが常でした。

しかし、今後のバリューは「クリック<ユーザー理解」
クリックした人が何者なのかを知ること、そしてのその人物を読み解ける事が、これからのネット広告では必要不可欠になります。多くのマーケターが今までと真逆の考え方でクリエイティブを考えなければならなくなるでしょう。

そしてこれはバナー以外でも言える事です。
メディアの、コンテンツや記事で単位で考えると、バナーに比べ、伝えられることが多くなります。
そんな中で何を伝えるか、伝えた事柄に関してどんなアクションが返ってくるか。
自分らの顧客はこういう人だからこんな人に何を伝えたい、という事をもっと真剣に考えなくてはならなくなります。

更に重要となる「コンテンツ」と「ストーリー」

この考察を踏まえてアナイグマはこれからの時代、コンテキスト、コンテンツが最重要になってくるのではと思っています。
そう『コンテンツ』と『ストーリー』です。

どんな訴求によって、何を理解してもらってエンゲージメントを高めてもらうのか。個が見えない分、考えるのはより難しくなります。
ですがそうしてコンテンツを強化することで企業とユーザーの関係性を作る事が出来、獲得が難しくなるポストcookie時代でも通用する戦略を建てることに繋がるのではないでしょうか。

アナイグマのひとこと

多くのコンテンツを作成し、興味関心がどこにあるのかを、知る努力をたくさんしないといけませんね。 今まで自動でやってくれてた便利なものが無くなるわけですから… マーケターや広告主だけでなく、広告代理店やメディアも一緒になって真剣に考えてアップデートしなければならない、広告業界全体の共通課題と言えるでしょう。 でも私は悲観してません。技術革新で色々できるようにはなりましたが、ケータイさえない時代があったんですから。デジタルだなんだというはるか昔から広告は続いています。温故知新、古い時代に戻ってより広告の本質に近づいていく良い機会なのかもしれませんね。