多様性という言葉が当たり前となった昨今、マーケティングのあり方も転換期を迎えています。
その中心となるのがインクルーシブマーケティングです。
従来のターゲティングよりも「広く多様な人々に届く」ことに価値をおく考え方です。
本記事では、インクルーシブマーケティングとは何か、なぜ今取り組むべきなのかという基本から事例までご紹介します。
インクルーシブマーケティングとは?
インクルーシブマーケティングは、これまで「この人たちは顧客ではない」とされてきた層を排除せず、積極的に捉えていくことで、新しい価値やビジネスチャンスが生まれてくるという考え方です。
年齢、性別、人種、性的指向、障がいの有無、宗教、言語など、あらゆる背景を持つ人々を包摂(インクルード)する視点を取り入れたアプローチ手法です。
従来のマーケティングでは特定の層にのみフォーカスし、ターゲットを絞っていたのに対し、インクルーシブマーケティングはより多くの人々にリーチすることを目指します。
ダイバーシティとの違い
- ダイバーシティ(多様性)…多様な人がいる状態
- インクルージョン(包摂性)…多様な人の個性が尊重され、活かし合える環境や文化がある状態
- インクルーシブマーケティング…ダイバーシティとインクルージョンをビジネス成長の核として据え、原動力とする戦略
なぜ今、重要なのか?
インクルーシブマーケティングの考えが重要な理由は、消費者の価値観が劇的に変化したことにあります。
特に次代を担うZ世代やミレニアル世代は、ブランドの「社会的姿勢」を鋭く見極めています。
機能や価格の優位性だけではもはや選ばれません。
インクルーシブな姿勢を貫くことは、ブランドへの信頼を強固にし、長期的な顧客ロイヤリティを築くための最大の鍵となっているのです。
実践のための3つのポイント
インクルーシブマーケティングを実践するには、以下の3つの観点が必要です。

ビジュアル表現
まず、広告やSNSに人種のみならず、体型、年齢、障がいの有無など、多角的な視点で多様な人々を起用することです。
単に記号的に並べるのではなく、誰しもが主役になれるビジュアルを意図的に構成し、尊厳を持って描くことが重要です。
固定観念から解き放つ、ストーリーテリング
物語を通じて、社会に根付く役割分担や固定観念を打破することも強い戦略です。
例えば「男性が家事を楽しむ」「女性がプロジェクトリーダーとなる」といった多様なライフスタイルを肯定的に描写することで、消費者からの共感や支持を得られるでしょう。
取り残さないアクセシビリティ
どれほど素晴らしいメッセージであっても、届かなければ意味がありません。
ウェブサイトやアプリを利用しやすくすることも大切です。
視覚障がいのあるユーザー向けにウェブサイトの読み上げソフトの対応をすることや、聴覚障がいのあるユーザーや音の出せない環境のユーザ向けの字幕付き動画など、あらゆるユーザーがストレスなくサービスに触れられる設計こそが、ブランドの信頼を高める重要な要素になります。
インクルーシブマーケティングの事例
Fenty Beauty
Fenty Beautyは世界的R&Bシンガーのリアーナが2017年に創業した化粧品ブランドです。
ファンデーションのカラーバリエーションは50以上にもなり、あらゆる肌色のユーザーに対応。
「Dark」ではなく「Deep」を使用していたりと、色を表す言葉にも細やかな配慮がなされています。
多様なモデルを起用しており、美の基準を画一的に押し付けるのではなく、人それぞれに合った色があるという、インクルーティブなメッセージを明確に打ち出しています。
茅ヶ崎市美術館
茅ヶ崎市美術館は、細い道が入り組んだ立地にあり、以前から「道に迷いやすい」という課題を抱えていました。
しかし、ある弱視の来館者から寄せられた「迷路のように楽しめた」という言葉が転機となります。
この気づきをもとに、同館ではインクルーシブデザインの手法を用いたフィールドワークを実施。
視覚だけに頼らない「五感に働きかける展示」や、作品の原点となった道をアーティストと共に歩くツアーなど、場所の特性を逆手に取った様々な企画を生み出しました。
TOTO
TOTOは、従来の公共トイレでは不便を感じていた多様なユーザーの声を拾い上げ、次世代の「パブリックトイレ」開発を推進しています。
車椅子ユーザーがスムーズに動ける広い空間設計はもちろん、介助者と同伴できる男女共用スペースの設置などの工夫を行っています。
さらに、手すり、点字案内、着替え台、大型ベッドなどを配置し、「誰にとっても使いやすい」を徹底的に追求する姿勢は、公共空間におけるインクルーシブデザインの指標となっています。
注意すべきポイント
最も注意すべきは「トークニズム(Tokenism)」を避けることです。
トークニズムとは、実態を伴っていないのに多様性を装うために特定の少数派を「一人だけ」登場させるような表面的な行為を指します。
見る人には「配慮してます感」を感じさせ、逆に反感や不信に繋がりかねません。
もう1つはステレオタイプを強化していないか?ということです。
「料理をするのは女性」「ITに疎い高齢者」といった固定観念に寄った描写は避けるべきポイントです。
無意識に反映させていないか、企画段階で多様な視点によるチェックが必要でしょう。
まとめ
インクルーシブマーケティングはブランドが長く成長していくための核心的なビジネス戦略です。
誰一人取り残さないという姿勢は、結果として「このブランドは自分を尊重してくれている」という安心感や信頼を与えます。
顧客とのロイヤリティを築くため、インクルーシブマーケティングを取り入れていきましょう。
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