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今注目のファンベースマーケティングとは?事例や成功のポイント

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最近話題のファンベースマーケティングをご存知でしょうか。
既存顧客であるファンとの絆を深め、共に商品やサービスを作り上げ、ビジネスを拡大していくマーケティング手法です。
SNS活用が大切だといわれている中、ファンとの繋がりが成功へのカギだと感じている方も多いのではないでしょうか。
今回はファンベースマーケティングとは何か、成功のポイントや事例をご紹介します。

ファンベースマーケティングとは

ファンベースマーケティングとは、自社ブランドに愛着を持ってくれる人(=ファン)をベースにして、中長期的に売上拡大やブランド価値を高めていくマーケティング手法のことです。
新規顧客獲得ではなく、既存顧客の維持に重きを置く点が、一般的なマーケティング手法とは異なります。
「継続的に購入してくれるリピーター=ファン」と思っている人もいるかもしれませんが、イコールではありません。
リピーターは仮に他ブランドで安価な類似品が出たら、乗り換える可能性が高い顧客のことをいいます。
ファンはブランドに愛着を持ってくれているので、たとえ類似品が出ても簡単に乗り換えないという特徴があります。

ファンマーケティングとの違い

類似した言葉に「ファンマーケティング」があります。

「ベース」がつくかつかないかの違いですが、意味は異なることを理解しておきましょう。

  • ファンマーケティング
    ファンをターゲットとして、ファンに「お金を使ってもらって」利益を得るためのマーケティング手法
  • ファンベースマーケティング
    ファンの声に耳を傾け、「その声を反映した商品やサービス作り」を心がけるマーケティング手法

なぜ今ファンベースマーケティングが重要なのか

ファンベースマーケティングが注目を浴びるようになったのには、いくつか要因があります。

安定した売上を作れる

有名なマーケティングの法則である「パレードの法則」はファンベースマーケティングにも当てはまります。
「パレードの法則(別名:ニハチの法則、8:2の法則)」とは、全体顧客のうち上位20%が売上の80%を生み出しているという考え方です。
つまり20%のファンを大切にすることで、売上全体の80%は安定することになり、ファンベースマーケティングの実施は売上維持に不可欠ともいえるでしょう。
長く愛用してくれているファンは、たとえ一度に使う金額が多くなかったとしても、継続利用してくれるのでLTVが高いことも特徴です。

新規顧客の獲得コストが高い

母数でいえば新規顧客の方が多いため、その層に向けてプロモーションを行った方がいいのでは?と考えるかもしれませんが、新規顧客の獲得コストの高さを踏まえると効果的とは言い難いところがあります。
マーケティング用語としても広く知られている「1:5の法則」があります。
新規顧客を獲得するコストは既存顧客と比べて5倍かかるという法則です。獲得コストが高いにも関わらず利益率が低いので、コストパフォーマンスの高い既存顧客を大切にするファンベースマーケティングが重視されているのです。

成熟市場になったため、消費行動が消極的に

日本は1980年代以降、成熟市場となっています。
成熟市場とは多くの商品の普及率が高く、成長期を超えた市場のことです。

ユーザーは幅広い選択肢が与えられ、購入割合も増えるかと思われがちですが、実際はそうでもないということがコロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授の行ったある実験結果でも示されています。

アイエンガー教授が発表した「ジャムの法則」において、種類が多すぎると選ぶことが難しく、途中で購買行動を中止してしまうという驚くべき実験結果が出たのです。

この実験は、スーパーでジャムの試食販売を実施し、1つ目のグループには6種類の中から、2つ目のグループには24種類の中から選んでもらい、購買率への影響を調査したものです。
その結果、試食後に購入した人の割合が、6種類のグループが24種類のグループの10倍にも達しました。

選択肢が多すぎると迷いが生じ、選びきれないというだけではなく、選んだ後に他の選択肢が良かったのではないかと後悔してしまうのではないかという意識から、購入決定できずに辞めてしまうユーザーがいると考えられます。

このように選択肢が多い現代の市場は、企業にとっては新規顧客の獲得が非常に難しくなっていることがわかります。

その点、ファンは「一度その商品を買ったことがある」というだけで企業にとっては存在価値が高く、主軸となるターゲットであるといえるでしょう。

新規顧客の獲得が難しいワケ

新規顧客の獲得が難しくなっている点について、もう少し詳しく解説していきます。

市場の縮小によって、新たなモノを買う人が減少

日本の人口は2008年のピークを迎えたのちに減少を続けており、その減少幅は10年連続で拡大しています。
少子高齢化も深刻で、2025年には人口の30%、2060年には40%が高齢者になると予測されています。
新規顧客となり得る人口そのものが減っているために市場も縮小傾向にあるのです。

また、「新たな商品・サービスに挑戦して失敗するくらいなら、いつもの使い慣れた商品を購入したい」と考える人は少なくありません。
特に高齢者は新しいモノを覚えたり、取り入れることに対してのハードルが高く、新しいモノを購入しようとする意欲が低下しがちです。
若者が減り、ターゲット層が高齢化するにつれ、今後ますます新規顧客の開拓は難しくなっていくでしょう。

SNSでバズる=売上アップではない

昨今、多くの人の情報源となっているSNSを利用した認知拡大や集客はWEBマーケティングにおいて重要とされています。
「バズる」ことで、商品やサービスが多くの人の目に留まり、購入へつながると考えていませんか。
実は、SNSで話題になっても、実際に購入まで至るケースはそれほど多くありません。
全く知らないアカウントであればそもそも信用されなかったり、芸能人やインフルエンサーなど有名人であっても商品を褒めてばかりの投稿が続くと、信ぴょう性を疑うユーザーも多いのです。
SNSで「バズる」ことで一過性のブームや話題になったとしても、必ずしも売上につながるとは言い難い状況だといえるでしょう。

ファンが新規顧客を繋いでいく

現在はかつてのようにTVCMで新規顧客を獲得することは難しくなっています。
SNSやネットに溢れた情報も信ぴょう性が感じられず、購買に繋がりにくいことが増えてきました。

その点、ファンは自らが気に入っている企業やブランド、商品やサービスの良さを家族や友人に伝えたいと考えることは少なくありません。
語っているうちに、いつの間にか広告塔代わりなっているケースも多いです。

情報過多で、何を選んだらいいかわからくなってしまう現代社会では、身近な人の口コミは信頼を得やすく、新たな顧客を獲得するチャンスともなり得るのです。

ファンベースマーケティング成功のポイント

開発秘話を公開し、愛着を深めてもらう

ファンのブランドへの愛着心や信頼をより高めるために、商品・サービスの開発秘話や背景を発信していくことがおすすめです。
商品開発には開発者の想いがこめられていることも少なくないでしょう。
ファンの共感を得られるようなストーリーを積極的に公開したり、ファンの意見を取り入れて改善した商品があれば「ファンを大切にしている」気持ちが伝わり、心を掴みやすくなります。
ファンベースマーケティングでは、ファンの熱量を高め、心を動かす感動が求められます。
ファンを大切にしている姿勢が伝われば、ますます周りの人に勧めたくなり、口コミ拡散効果も期待できます。

顧客一人ひとりにパーソナライズ化した戦略を練る

ファンベースマーケティングにおいて重要なことは、顧客一人ひとりのフェーズ毎にアプローチ戦略を変えることです。
商品やサービスにただ満足するだけでは「ファン」になり得ません。
新規顧客に対してはSNSキャンペーンでやクーポン配布で再購入を促す、既存顧客にはアフターフォローやカスタマーサービスを充実させ、さらにファンコミュニティを活用してブランドに対する愛着を深めてもらうといった、顧客のフェーズに合わせたニーズを考え、施策を実施していくことが大切です。
ファン育成は時間がかかるため、まずは育成全体の道すじを立てた後に、具体的な施策を検討するのがおすすめです。

ファン同士の交流の場を作る

SNSでユーザーと交流することもファンマーケティングで重要な施策の一つですが、オープンなSNSではなく、限られたファンだけが交流できる場を作ることも効果的です。
ブランドの新たな魅力の気づきがあったり、消費者目線の率直な意見を聞くことで商品やサービスの改善につながるからです。
例えば、会員制コミュニティサイトの設立や、体験型イベント、ファンミーティングのような交流会などがあげられます。
リアルな声が拾えるのはもちろんのこと、ファンも一緒に商品を作り上げている一体感も生まれ、熱量が高まりさらにコアなファンになっていく可能性があります。

ファンベースマーケティング事例

ファンマーケティングの成功事例を3つご紹介します。

コメダ珈琲

喫茶店チェーンの「コメダ珈琲」はオンライン上のコミュニティサイト「さんかく屋根の下」を運営しています。
リピーターが多いチェーン店として評判の「コメダ珈琲」は、オンラインサイトを作る前から常連客の声を聞く機会を積極的に作っていました。
2020年にオープンした「さんかく屋根の下」は会員数3万人を誇る大規模オンラインコミュニティです。
ファンが投票やコメント、写真が投稿できるコンテンツが充実しており、ファン同士の交流が活発に行われています。
新商品の紹介やオンライン座談会などファンの熱量を高める企画が実施され、よりファンの「コメダ珈琲」への愛着心を高めています。

チロルチョコ株式会社

チロルチョコ株式会社では、2022年にオフラインのファンイベント「チロルフェス」を初開催しました。
ワークショップやオリジナルグッズの販売などファンには嬉しいイベントで、新商品の味やデザインを社員がプレゼンし、ファンが意見を出し合うプレゼン大会は大盛況だったそうです。
直接ファンと議論していくので、ファンとの一体感を高められ、企業側はアイディアをブラッシュアップさせることができるというメリットもあります。
2023年のチロルフェスはさらに規模拡大。来場者は1,100名にも上り、来場者満足度も95%超えだったそうです。

その他にもオンラインイベントの「チロルMTG」も継続的に実施。
クイズや利きチロル、新商品の紹介などの企画が好評で、熱心なファンを増やしています。

スノーピークス

アウトドア用品やアパレルを販売しているスノーピークでは、ポイントカード会員が参加できる「Snow Peak Way」というキャンプ場を舞台にしたファンミーティングイベントを開催しています。
ファン同士の交流ができるワークショップやセミナーなどのコンテンツが多数用意され、メインイベントの「焚火トーク」では、ファンとスタッフたちが焚き火を囲みながら、ゆったりと意見交換をするというのが特徴的。
ファンとスタッフの垣根を超えてキャンプを愛する人たち同士、信頼関係を深めることができるイベントになっています。
1998年から継続的に開催し、応募倍率の高さから開催地や回数が増やし、2023年には12会場18回開催になりました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
成熟市場となり、情報が溢れる現代社会において、新規顧客獲得は今後ますます難しくなっていくと考えられます。
既存顧客を重視するファンベースマーケティングはより一層不可欠なものとなっていくでしょう。
ファン作りは中長期的な目線が必要です。

ソーウェルバーではファンの心理をSNSのデータから読み解き、商品開発やマーケティング施策に活用する分析ツール「HAKURAKU」を開発しました。
忌憚なき意見が飛び交うSNSにある、ファンだからこそ改善してほしい点や競合のファンの意見も参考になります。
ただ、広告やボットなどノイズが多くどうしても埋もれてしまいがちなため、HAKURAKUではクレンジング機能により効率的にユーザーの意見のみを抽出可能にしました。
ファンの生の声を活かしたいとお考えの方は是非お問い合わせください。

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