現代のマーケティングでは「顧客理解」が成功の鍵となっています。 しかし近年、属性や年齢、性別といった属性によって顧客セグメントを分けるだけでは購買行動の本質が説明できないことがわかってきました。 そこで注目したいのがジョブ理論という考え方です。 本記事では、ジョブ理論の基本概念から、なぜ重要なのかを解説します。
ジョブ理論とは
ジョブ理論とは、顧客が製品やサービスを選ぶ背景にある本質的な理由や目的に着目する考え方です。
2003年にハーバード・ビジネス・スクールの教授であるクレイトン・クリステンセン氏によって提唱されました。
人は製品そのものを求めているのではなく、「達成したい進歩(=ジョブ)」を実現するための手段として製品やサービスを利用すると捉えます。
この理論では、顧客の表面的なニーズや属性ではなく、特定の状況の中でどのような前進を望んでいるのかに焦点を当てます。
顧客の深層心理や潜在的な目的を理解できるようになるため、新しい視点から効果的な製品開発やサービス改善につなげることができるとされています。
ジョブとハイア
ジョブ理論にはジョブとハイア(雇う)という2つの概念があります。
・ジョブ
ある特定の状況において、人(顧客)が成し遂げたいと考えている「進歩」のこと
・ハイア
そのジョブを達成するための手段として、人が特定の製品やサービスを利用する行為
つまり顧客は、単に商品やサービスを購入しているのではなく、自らが解決したいジョブを解決するために、それらを“雇用”しているというものです。
従来のマーケティングは、年齢や性別といった顧客の属性データを軸に分析する手法が主流でした。
一方でジョブ理論は、顧客一人ひとりがどのような状況に置かれ、どのような進歩を目指しているのかに焦点を当てるのです。
ジョブの種類

ジョブには「機能的ジョブ」「感情的ジョブ」「社会的ジョブ」の3つの分類があります。
これらの違いを理解することで、顧客が抱えている課題や目的をより明確に捉えやすくなります。
機能的ジョブ
商品やサービスの機能によって解決される課題のことです。
コーヒーを「眠気を醒ましたい」「水分補給したい」といった目的で購入している人は機能的ジョブの解消のために行動しているといえます。
感情的ジョブ
顧客が商品やサービスを通じてどう感じたいかのことです。
「コーヒーを飲むことで癒しの時間を作りたい」「好みのコーヒーを見つけることを楽しみたい」など、顧客自身が手に入れたい感情が感情的ジョブとなります。
社会的ジョブ
顧客が他者からどう見られたいか(または見られたくないか)という、社会的評価やステータスに関わるジョブのことです。
「高級店のコーヒーを飲むことでハイクラスな人だと思われたい」「国産コーヒーを飲んで地域活性化したい」など自身のイメージ作りに役立つアイテムとしてコーヒーを購入している人は社会的ジョブに当たります。
ニーズとの違い
ジョブと似たシーンで使われる言葉に「ニーズ」がありますが、果たす役割が異なります。
ニーズは顧客による商品・サービスへの期待や具体的な要求のことを指し、ジョブは顧客が認識していない根本的な背景や状況など、本質的な課題を指しています。
例えば「濃いコーヒーを飲みたい」はニーズですが、「朝の仕事前に気分を切り替えたい」「短時間にリフレッシュしたい」といった心理や状況まで含むのがジョブです。
顕在化しているニーズに応えることは顧客満足度を上げ、利益を生み出す一方、ジョブを解決することで新規顧客の開拓が期待できるのです。
売上増加に成功した事例

最も有名な事例である、ミルクシェイクの事例をご紹介します。
あるファストフード店では、売上向上のため顧客の属性を分析し、味や価格の改良を行うなど様々な施策を行いましたが、効果がありませんでした。
そこで前述のクリステンセン氏が「顧客がミルクシェイクを購入している背景」にフォーカスして観察とインタビューを行いました。
すると、ミルクシェイクは朝の通勤時間帯に購入されており、車で通勤中に車内で飲んでいることが判明。
顧客は「車通勤中の空腹と退屈をまぎらわせる」という目的のために購入していたことが明らかになりました。
同時に、他のバナナやドーナツといった商品は運転中には都合の悪い点(手が汚れたり、すぐ食べ終わってしまう)があるため、ミルクシェイクが選ばれていたこともわかったのです。
このジョブに注目したファストフード店は、フルーツの塊が入ったミルクシェイクなど、社内で長持ちして楽しめる商品を開発した結果、700%売上増加に成功しました。
重要なのは「人」ではなく「状況」に着目する点だったのです。
ジョブを発見するには
無消費に着目する
無消費とは、本来ジョブが存在しているにもかかわらず、適切な製品やサービスが利用されていない、あるいは利用できていない状態を指します。
なぜ自社商品やサービスが選ばれていないのか、代替手段で済まされているのかの理由を丁寧に深掘りすることで、課題が解決できていない新たな市場やニーズを見つけることができる可能性があります。
購入動機を深掘りする
エスノグラフィー調査(行動観察)やインタビュー調査を通して、顧客の無意識の行動も含めた意思決定までのプロセスを探り、理解する必要があります。
「なぜこの商品やサービスを選んだのか」「どのような経緯で意思決定に至ったのか」が見えてくると。表面的な理由の奥にある「本当の購入動機」を捉えることができます。
その結果、顧客が達成したいのはどのようなジョブなのかを具体的に把握し、そこから得た発見を基に商品やサービスの改善や新しい価値提案につなげていくことができるのです。
まとめ
顧客は商品を選んでいるのではなく、達成したい「進歩(ジョブ)」を実現するためにそれを“雇っています”。
属性ではなく状況や行動の背景を捉えることで、より本質的な顧客理解と価値設計が可能になり、効果的な商品開発やサービス改善に繋げることができます。
顧客の本当のニーズを理解し、新しい価値を提供するためにジョブ理論を活用していきましょう。
ソーウェルバーでは、AIを活用しユーザー分析が可能になるツールHAKURAKUを提供しています。
ひと味違った分析を行うことで、思いもよらないジョブが発見できるかもしれません。
ご興味がある方はぜひ一度お問い合わせください。




