SNSが日常となり、身の回りに広告が溢れている昨今、ブランドの情報発信は欠かせないものとなっています。
しかし、今注目を集めているブランドの多くは意外にも「全てを語らない」という選択をしています。
理由はシンプルで、「余白」があることでユーザーが「参加したくなる」からです。
マーケティングの世界では今、「ブランドが世界観を作り込む」時代から「ブランドとユーザーが共創する」時代へと変化しています。
その鍵となるのが「余白」の設計なのです。
余白とは何?
マーケティングにおける「余白」とは単なるデザイン上のスペースに留まらず、ブランドがあえて残す「未完成の部分」を意味しています。
また、ユーザーが自分なりの意味づけや解釈を加えられる参加の入口でもあります。
デザインの余白
写真・グラフィック・UIなどの視覚デザインにおける余白は、情報を詰め込まないことでユーザーの想像を広げることができます。
ユーザー側の「私ならこう使う」といった考えを引き出すきっかけとなります。
意味の余白
ブランドが全てを説明してしまうと、ユーザーは「理解」で止まってしまいます。
あえて説明を省き、意味を曖昧にすることで、ユーザーは自分の価値観に重ねて意味を補完します。
ユーザー自身が見つけた答えであるからこそ、拡散されやすくなります。
物語の余白
最も共創性を生むことができるのが物語の余白です。
ブランドは完成されたストーリーを提示するのではなく、始まりだけを示しユーザーはその続きを自分ごととして語れるようにします。
完成していないからこそ、ユーザーは主体的に関わり、ブランドと共に価値を作っていくことができるのです。
余白とは、ブランドが全てを語らない勇気を持ち、ユーザーが能動的に価値を作るための余地を設計することです。
それこそが共創を生み出す起点となるのです。
共創とは何?
共創とは、ブランドとユーザーが一緒に「価値を生み出し、高めていく」プロセスのことを指します。
ユーザーは企業から受け取るだけの単なる「消費者」ではなく「共同制作者」として、ブランドの物語を共同で育てていきます。
一緒に価値を作ったという実感が、ブランドとユーザーの結びつきを強くし、ブランドを育てる基盤となるのです。
事例から学ぶ余白の重要性

無印良品
生活雑貨を扱う無印良品とニトリのInstagramを比較すると、余白設計の違いが見えてきます。
無印良品の投稿では、シンプルな写真と端的なテキストで商品の世界観を示し、商品の全てを語りすぎていません。
そのため、ユーザー自身が「どうやって使おう?」「自分の生活のこの部分に合いそう」と想像する「余白」があります。
一方、ニトリは新商品の魅力をしっかり説明する投稿が多いため、売る力は強いものの、ユーザーが自らが語る「余白」が少ない傾向があります。
その結果、Instagram上ではユーザーが能動的に意味を捕完できるようになっている無印良品の方がファンコミュニティが育ちやすく、自然とUGCが広がる構造になっているのです。
もちろんニトリの「売り込み型」戦略がフィットする場合もあるので、どちらが正しいということではありません。
ただ、特に中小企業の場合、価格競争や商品力だけで大手に勝つのは難しいでしょう。
そこで無印良品のような「余白を残し、ユーザーと共創する」戦略を選ぶことで、SNS経由の顧客獲得に繋がりやすいと考えられます。
BASE FOOD
語りすぎない余白設計がどれほど共創を生むかがわかる代表例がBASE FOODの事例です。
・余白からUGCを生む仕組みづくり
BASE FOODでは、商品のデザインやパッケージから商品説明まであえて「余白」を残しています。
商品の味について細かく説明しないことで、ユーザーの「自分自身で感じた素直な感想」を投稿したくなる意欲を刺激しています。
また、UGCの力を最大限活用するために、ユーザーが自然と投稿したくなる仕組みを作っています。
「栄養ダッシュボード」というマイページの機能で、自分がこれまでBASE FOODの商品をどのくらい食べ、どれだけ栄養素を取り入れたのかの履歴が確認でき、達成感を味わうことで投稿を促しています。
その他にも「おすすめの食べ方」などの投稿フォーマットを用意することで、ユーザーが投稿しやすい工夫がされています。
・文脈理解と双方向性
BASE FOODでは、顧客からの要望を表面的に受け取るのではなく、その背後にある利用シーンや不便さといった「文脈」まで深く理解することを重視しているのがポイントです。
例えば「2個パッケージを個包装にしてほしい」という声に対しても、「朝食で1つ食べて、残りの1つは会社で食べたいのに持っていきづらい」という困りごとの具体的なシーンまで把握することで、実際の生活の中でどのような不便が起きているのかを解像度高く捉え、商品改善に反映しています。
さらに、顧客の声を活かすだけでなく、「どのように反映したのか」を顧客に明確にフィードバックする双方向のコミュニケーションを行っています。
これにより、顧客は自分の意見が価値創造に貢献したと実感でき、継続的に意見や要望を出したいと思えるような共創が生まれているのです。
NICOBO
パナソニックの家庭用ロボット「NICOBO」はあえてできないことを残し、「弱いロボット」と位置付けているのが興味深い点です。
見た目は頼りなく、寝言やオナラもするし機嫌が悪い時は返事をしない…そんなところが不思議な魅力となり、大きな話題を呼びました。
世の中のロボットの多くは自己完結し、面倒なことを全てやってもらえることを目指しています。
しかし、それは人とロボットに距離が生まれ、ロボットに対して「もっと早く、もっと完璧に」とどんどん要求を高めてしまうのです。
完璧ではないからこそ、人が手助けしたくなり、そこに関係性が生まれます。
この考え方はSNS発信や商品デザインにもそのまま使えます。
未完成であることは欠点ではなく、共創を引き出す仕掛けになり得るのです。
余白と共創を活用しよう
前章で紹介した3つの事例に共通することは「ブランドが全てを決めないこと」です。
- 商品の使い方を決めない(無印良品)
- 味を詳しく説明しない(BASE FOOD)
- できない部分を残す(NICOBO)
余白=未完成の部分に、ユーザーの想像や体験、工夫が入ることでUGCが生まれ、コミュニティが育ち、ブランドへの愛着へと繋がっていきます。
余白があるからこそ共創が生まれ、共創がブランドを強くしていくのです。
まとめ
ブランドストーリーは企業が一方通行で発信するものではなく、ユーザーと共同で育てる(=共創する)ものです。
共創のためには「余白の設計」が欠かせません。
余白をうまく活用し、ユーザーが“自分ごと化”できる仕掛け作りが鍵となるのです。
価格競争や商品力だけで勝つのは難しい現代だからこそ、余白と共創の力を使って「好き」を育てていきましょう。
ソーウェルバーでは、AIを使ってSNS投稿データを分析し、顧客の「好き」という生の声を把握できる新しいツール「HAKURAKU」を提供しています。
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